象のしっぽを追っかける

Tの化石採集日記

中里層のロストロコンク(Rostrocochia=吻殻類)を見てみる

 ロストロコンクは去年の正月に妙な形の腕足として記事に載せた時にペクテンさんより指摘していただいた経緯がある。以来、全体はいったいどんな形状なのか興味をそそられていた。去年の巡検で追加標本も得られ、ほぼ完全な状態で取り出せたものもある。どんな形なのか絵も描いてみた。ここで私自身の理解のために、吻殻類って何?どんな形状か?この地域から出てきたものがどんなものかまとめて見ようと思う。

 

吻殻類(Rostrocochia)

  • カンブリア紀前期に出現、ペルム紀後期に絶滅した軟体動物門(Mollusca)の一網
  • 外形は二枚貝に似ているが殻は単一であり左右に分離しておらず開閉もしない。
  • 1972年に独立した吻殻網として提唱され、後に原始的なリベイリア目(Ribeirioida)と派生的なコノカーディウム目(Conocardioida)の2目に分類された。
  • オルドビス紀前期にもっとも繁栄したが、中期に二枚貝の多様化が進むとともに衰退、リベイリア目はシルル紀前期に姿を消した。
  • 2目、3ダースの属、1000種類以上いた。
  • 突き出た前方に開口(gape)があり、筋肉の足が出ていた。大抵は前方を堆積物に埋まった状態に描かれている。「足の内部の解剖学的構造と形態は、掘足類に近かった」。
  • 二枚貝類と共通の祖先(単板類)を持つ」、「デボン紀の間にコノカーディウム目の吻殻類が掘足類(ツノガイ類Scaphopoda)を生み出した。」という説がある。
  • 日本では、秋吉台と新潟の青海石灰岩福地の石炭系から産出の報告がある

 一般的な解説は大体このようなことになる。「二枚貝類とツノガイ類をつなぐ絶滅貝類」という位置付けのようだ。日本の文献はまだ見れていない。上記の他にも最近の生物の系統研究には、生物のもつタンパク質のアミノ酸配列や遺伝子の塩基配列を用いて系統解析を行う分子系統学という分野があるという。

http://www.um.u-tokyo.ac.jp/hp/sasaki/04-Sasaki-publications/text/JB009-Sasaki-2010-1-2.htm

http://palaeos.com/metazoa/mollusca/rostroconchia/rostroconchia.html

http://.berkeley.edu/mollusca/mollusca/bivalvia/rostroconchia/rostroconchia.html

https://en.google-info.org/index.php/2056806/1/rostroconchia.html

 

コノカーディウム目(Conocardium)の形状

 国内のデボン系からの産出は初めてのようだ。中里層のロストロコンクはコノカーディウム目になる。

 コノカーディウムと二枚貝類、ツノガイ類の殻には、それぞれ前後と背側,腹側の方向がある。筋肉の「足」が出る方が前方。二枚貝では蝶番のあるほうが背側、大抵はどちらかが張り出しているが張り出しの少ない方が前方。ツノガイでは開口の広い方が前方、湾曲した外側が腹側となる。

 コノカーディウムは二枚貝に似ていて初めは「ニセ二枚貝」と呼ばれていた。すごく乱暴な言い方をすると、ツノガイの中央に二枚貝をくっつけた形、または二枚貝の蝶番のあたりにツノガイを突き刺したような形状だ。ほぼ二枚貝の形状の中央体、前方の太い張り出しをsnout、後方の細長い突起がrostrum(吻)と呼ばれる。前方のsnoutには足が出る開口(gape)がある。はじめは前方の目立つ張り出しが吻状突起だろうと思ったのだがそれは誤りで、後方の小さな突起が名前の由来であろうrostrum(吻)になる。中央部は厚みがあり「球状のものもある」。二枚貝と同様に殻頂(umbo)があり、放射肋がある。後方のrostrumの付け根周辺はこの放射肋の角度に沿って、様々な角度で平面部(rostral erea)を形成する。側面からこの平面部の生成過程を見ると二枚貝のように見える部分が後方から徐々に切り取られているように見える。最大値に達したもの(背側前後軸dorsal axisに対しほぼ90度)は後方半分が切り取られ、円錐形、腹側接合部を頂点とした三角錐または漏斗状になる。中里層から出てきたものもこのタイプになる。この平面部の形状はハート状で、コノカーディウムの形状を特徴づけるものになっている。また、この平面部のふちに板状の囲い(food)を持つタイプもある。他にも前方のsnoutや後方のrostrumが長く突き出たタイプなど、多様な形状がある。これらの形状は時代による変遷もあるだろうが、多くは同時期に様々な形状があったようだ。形状の変遷がどのようにとらえられているのかは不明。論文のタイトルだけ見ると多くの研究があるようだ。

 

次に中里層から出てきたものをまとめて並べてみる。

 現在14個のサンプルがある。母岩から取り出せたもの8個(このうち2個がほぼ完全、ロストラルエリアが見れるもの4個)、母岩についた腹側4個、先端部が残された腹側雌型2個。実際の標本のサイズとしては小さいものだ。多くは幅1㎝長さ1.5㎝というところだ。大まかには先に書いたように円錐形、三角錐または漏斗状ではあるが、見る方向で形が違い、全体をとらえるのが難しい形状だ。また中里層は風化した頁岩層で殻は残されていないため化石は内形雄型になる。外形を見るため雌型からゴム型も取った。全体が残された標本でも前方の開口部(gape)で母岩とつながっているため大抵はsnoutの根元部で折れてしまう。数種類ある可能性もあるので標本ごとに番号を付ける。

 

1.D8産 W8ミリ、H12ミリもっとも変形が少ないと思われるもの。,rostrumが残されている。雌型にまだ前方先端部が残されている。

f:id:kyte55712:20210425101313j:plain
f:id:kyte55712:20200723174430j:plain
f:id:kyte55712:20200723174405j:plain
f:id:kyte55712:20200723174239j:plain
ロストラム平面部
f:id:kyte55712:20200723174324j:plain
f:id:kyte55712:20200723174303j:plain
f:id:kyte55712:20200723174251j:plain
f:id:kyte55712:20210425101116j:plain
本体部側面、腹側、背側
f:id:kyte55712:20210419224842j:plain
f:id:kyte55712:20210419224721j:plain
f:id:kyte55712:20210419224733j:plain
外形ゴム型

2.A沢転石 W11ミリ、H7ミリ、L13ミリ 高さ方向に圧縮されている。ほぼ全体の形が残されており、雌型からは外形の形が得られた。

f:id:kyte55712:20200922201840j:plain
f:id:kyte55712:20200922201718j:plain
f:id:kyte55712:20200922201540j:plain
f:id:kyte55712:20200922201744j:plain
ロストラム平面部rostral erea、側面、腹側、背側
f:id:kyte55712:20200922201828j:plain
f:id:kyte55712:20200922201731j:plain
f:id:kyte55712:20200922201638j:plain
f:id:kyte55712:20200922201429j:plain
斜め方向
f:id:kyte55712:20210419224338j:plain
f:id:kyte55712:20210419224326j:plain
f:id:kyte55712:20210419224314j:plain
f:id:kyte55712:20210419224301j:plain
f:id:kyte55712:20210419224249j:plain
外形ゴム型

3.D8産 W11ミリ、H9ミリ、L12ミリ 今年になって分離できたほぼ完全なサンプル。snoutの先端部がわずかに切り取られているが、そのため開口部(gape)の形状がよくわかる。2番のサンプルより背側snout先端部がラッパ状に広がっている。rostralerea外周のhood?もきれいにも残されている。雌型より全体の3分の2ほどのゴム型が取れた。

f:id:kyte55712:20210411011527j:plain
f:id:kyte55712:20210411011516j:plain
f:id:kyte55712:20210411011504j:plain
f:id:kyte55712:20210411011452j:plain
f:id:kyte55712:20210411011430j:plain
f:id:kyte55712:20210419224420j:plain
f:id:kyte55712:20210411011336j:plain
f:id:kyte55712:20210411011404j:plain
f:id:kyte55712:20210411011349j:plain
f:id:kyte55712:20210411080240j:plain



4.D8産 W11ミリ、H10ミリ

f:id:kyte55712:20200723173938j:plain
f:id:kyte55712:20200723173950j:plain
f:id:kyte55712:20200723173959j:plain
f:id:kyte55712:20200723174011j:plain
f:id:kyte55712:20210419224457j:plain
f:id:kyte55712:20200723173926j:plain
f:id:kyte55712:20200723173858j:plain
腹側接合部とロストラム平面部

5.D8産 

f:id:kyte55712:20200926135347j:plain
f:id:kyte55712:20200926135334j:plain
f:id:kyte55712:20200926135321j:plain
f:id:kyte55712:20200926135307j:plain
f:id:kyte55712:20200926135159j:plain
f:id:kyte55712:20200926135145j:plain
 

6.D8産 

f:id:kyte55712:20200723174752j:plain
f:id:kyte55712:20200723174739j:plain
f:id:kyte55712:20200723174637j:plain
f:id:kyte55712:20200723174547j:plain
f:id:kyte55712:20200723174624j:plain
f:id:kyte55712:20210419224549j:plain



7.D8産  本体部とsnoutの境界当たりの形状が見れる。部分だが、雌型の保存が最も良くから表面の模様がはっきり見える。まだ続きが埋まっている。うまく掘り出せればsnout部の詳細が見れるかもしれない。

f:id:kyte55712:20200723173726j:plain
f:id:kyte55712:20200723173713j:plain
f:id:kyte55712:20200723173656j:plain
f:id:kyte55712:20210419224613j:plain
f:id:kyte55712:20210425101236j:plain
f:id:kyte55712:20210425101157j:plain
f:id:kyte55712:20210425101223j:plain
f:id:kyte55712:20210425101210j:plain



8.D4産 3,4番と同じ方向で圧縮、変形している。殻の一部が黒いガラス質になって残されている。rotralereaも残されているようだ。

f:id:kyte55712:20210419224652j:plain
f:id:kyte55712:20210419224639j:plain
f:id:kyte55712:20210419224626j:plain

 

9.D4産 W15ミリと一回り大きく、放射肋の模様が見える。一体の殻のはずだがrostralereaはない。

f:id:kyte55712:20210424230020j:plain
f:id:kyte55712:20210424230005j:plain
f:id:kyte55712:20210424230156j:plain



10.D1ツクダニ層 D1,D4のサンプルはロストロコンクの存在を知る前に妙なものとして持ち帰ったものだ。このサンプルはD8のものの2倍近いWになりそうだ。基本同じタイプだが種類が違うように見える。

f:id:kyte55712:20200628210030j:plain
f:id:kyte55712:20200628210017j:plain
f:id:kyte55712:20200628210222j:plain
f:id:kyte55712:20200628210139j:plain
f:id:kyte55712:20200628210153j:plain
f:id:kyte55712:20200628210045j:plain
f:id:kyte55712:20200628210207j:plain


11.D1ツクダニ層 W19ミリ一番大きいサンプル。放射肋がはっきりみえる。

f:id:kyte55712:20200701005157j:plain
f:id:kyte55712:20200701004214j:plain
f:id:kyte55712:20210424230503j:plain
f:id:kyte55712:20210424230451j:plain


12.D10転石 大きさはD8産より同じか少し小さく見えるが放射肋ははっきり見える。

f:id:kyte55712:20201018180442j:plain
f:id:kyte55712:20201018180429j:plain
f:id:kyte55712:20201018183554j:plain
f:id:kyte55712:20201018183610j:plain


13.D1腕足ライン snout先端部の形状が見える。これもD8産と形状が違うかもしれない。

f:id:kyte55712:20200905034951j:plain
f:id:kyte55712:20200905035030j:plain
f:id:kyte55712:20200905035043j:plain


14.産地名なし 右が13番との形状比較、かなり長く見える。

f:id:kyte55712:20200819035357j:plain
f:id:kyte55712:20200819035510j:plain
f:id:kyte55712:20210411080229j:plain

 

 これらのサンプルをもとに、どうゆう形状か探りながら描いてみたのだが…。

 化石の変形を描いた絵をもとにコピー機を使って再現しようとしたが、どうも修正が必要のようだ。時間がかかりそうなのでここに載せるのはやめておく。代わりにノートに描いた下書きと最初に描いたスケッチを載せておく。

f:id:kyte55712:20210503113835j:plain
f:id:kyte55712:20210502235935j:plain
f:id:kyte55712:20210503000057j:plain


 詳細と他の地域のものとの違い、中里層の化石の変形について、複数の種類の可能性については、後で追記することにする。




 










 

ほぼ半年ぶり

 久しぶりに編集画面を見る。ほぼ半年ぶりになる。このブログを見る人は多くはないが、ボヘミやんと何人かは時々チエックしてくれていたかも知れない。年末年始はさすがにあきらめた。今の状況だと多分5月も難しいだろう。1月にボヘミやんと話した時には春までには何とか…と言っていたが、目だけではなく体調にも不安があるようなことを言っていた。また現場復帰できることを心待ちにしている。どんな感じだろう?

 

 前回の記事以降は10月にD9から出てきAcanthopygeの尾部のクリーニングを試みたが雌型も残しつつ分離するのは難しく止めた。なにより小さすぎ。以前D6から出てきた白い殻が残る頭部のクリーニングをしてみたがこちらは残念ながら続きはないようだった。ただこの石、まだ割れそうなので割ってみたらなんと頭部がもう一つ出てきた。

f:id:kyte55712:20210411104123j:plain
f:id:kyte55712:20210411104037j:plain
f:id:kyte55712:20210411104247j:plain
f:id:kyte55712:20210411104223j:plain
f:id:kyte55712:20210411104135j:plain
f:id:kyte55712:20210411104112j:plain

 しかも結構大きい。全体の幅にすると20ミリくらいありそうだ。前後方向に見事に折れ曲がっているがその分、頭部の厚みの情報が残されているかも知れない。ネットの画像を見ると頭部の厚みがかなりあるようで巻き込んでいるようにも見える。D1腕足ラインのボヘミやん標本に近いものであろう。今まで画像をちゃんとチェックしていなかったがこの三葉虫にしても「デボンの森」から出ているKettneraspis にしても、「黒太郎」にしても、デボン紀三葉虫はかなり派手で楽しい。Cyphaspisがおとなしく見えてしまう。

 

 去年はコロナながらも、ある程度の成果は得られたと思っている。D9の追加調査での「黒太郎」と「脱皮場」と思われるファコの産状、ロストロコンクの追加標本、D4を除く各ポイントの追加調査でもすごい化石が出たわけではないが、次につなげる新たなラインを何本か確認しているし、最後にD10の「しっぽ」を捕まえた。もともと探しているのが小さいものたちだから、びっくりするようなすごいものはなかなか出てこないが、捨てる寸前の25ミリの石から完全体と、私の中ではD6から出てきた「ほぼ正三角形の腕足」はびっくりであった。見たことがない。どこか他から出ているのか、名前があるのか知りたいところだ。

 この地の層準については未だに釈然としていない。スッキリさせるには決定的なラインの発見が数か所必要だと考えている。まだあちこち歩きまわらなければならない。気がかりなのは、この辺の山の地権者の方々に未だにご挨拶していないということ。去年伺おうと思っていたのだが、あの状況だったのでやめた。今年こそ何とかとそれができればと思っている。

 

 それから化石とは全然関係のないことだがここ数年にわたり仕事以外に引き受けた役職からこの春にようやく解放された。年間を通して決して少なくはない作業量で先月もかなりの時間を取られた。もう考えなくてもいいと思うと嬉しくてしょうがない。そんな中でも今年に入ってロストロコンクの形状がどうなっているのか資料を探しながら見てみた。次にその記事を書こうと思う。

「とある沢」探索3度目でD10

 二人は二日目のD1で進展があったようでその続き。私は「とある沢」リベンジに向かった。

 またまた転石から露頭を探るところからかと思いつつ沢の入り口から探索開始。前回は天気が悪く小雨が降っていた。生い茂った林の中のため地面が濡れるほどではなかったが沢の石を見るときにはヘッドライトも使うほど薄暗かった。こういう作業には条件が悪かったようだ。今回は沢の石も見え方が違うし、3度目にしてやっと、前回見つけた斜面の転石の延長あたりで腕足の入った石が沢を横切っているのを確認できた。ただこの石はサンゴがたくさん入った黒色頁岩層の石ではないようだ。前回も見て回った別の斜面で今回は、小さな枝状のサンゴがたくさん入っていてまるでペルムの松葉石のように風化した石を見つけられた。この石が年末に見つけた黒色頁岩が風化したものと思われる。斜面をジグザグにこの石をたどりながら登っていき、この石が途切れた少し上あたりでこの石の露頭ではないが、腕足の入った露頭に辿り着いた。この露頭は斜面に点々と続き、15~20メートルほど追跡できる。

 

Cyphaspis.sp 

 枝状のサンゴが入った転石から出てきたもの。W7ミリほど、はじめ左側の三角に見える部分が正中で、そこで折り曲げられ目がずいぶん下についていると思ったが、三角に見えるところは正中ではなく左側の眼の上あたりだ。頭部の右斜め前方から圧縮され、左側は2ミリない幅で折りたたまれている。この方向から見た形状が最も変形されないで残されているということになる。

f:id:kyte55712:20201018183744j:plain
f:id:kyte55712:20201018183717j:plain
f:id:kyte55712:20201018182713j:plain
f:id:kyte55712:20201018182700j:plain
f:id:kyte55712:20201018182327j:plain
f:id:kyte55712:20201018182315j:plain

 この日の夜、早速フリックさんに見てもらった。頭鞍が雌型に埋まっている状態であったが(下段左)、雌型を見てあっさりと同定していた。

 画像を確認しないでクリーニングを始めたため肝心の頭棘の根元部部を半分飛ばしてしまったが頭棘が外側に向かって伸びて根元が太いのが分かる。ひどいクリーニングで申し訳ない。とんでもなく長い頭棘が確認できればよかったがこの先は残念ながら折れてないようだ。確かにこの角度で見ると、頭部前面が急角度で立ち上がりさらに頭鞍が盛り上がっているように見える。頭鞍が縦長に見えるのは縦に折りたたまれているからであろう。眼のように見えるのは眼ではなく根元が盛り上がったもの。眼はそこからさらに細く突き出しているのが雌型でわかる。写真ではわかりにくいが、目の根元と頭鞍には粒状装飾が見える。

 この三葉虫はデボンの森からチーク、フリックさんのD1の三葉虫のリストにも名前があり、前に画像を検索した時には、こんなものが出てくるものか?と半信半疑であった。生息域ヨーロッパ、モロッコ、北アメリカとある。当時の位置関係はわからないがずいぶん離れていたことだろう。内モンゴルとの関連が指摘されているところではあるがそれを一気に飛び越えてしまう。

 今迄に出てきた標本の写真を見てみたいところだがまだ見ていない。この形状であればチークだけでも同定ができそうだ。追加標本を期待したい。

 そしてこの日二人が行ってるD1では更なるサプライズがあったようだ。それにしてもフリックさんおそるべし。

 

不明種尾部W8ミリ

 上の石の近くにあった転石、周縁が広く中軸が円錐状。このタイプは見覚えがある。

f:id:kyte55712:20201025230442j:plain
f:id:kyte55712:20201025230413j:plain
f:id:kyte55712:20201025230427j:plain

 

ロストロコンクL17ミリとcalceola(スリッパサンゴ)W13ミリ

 比較的化石のを多く含まない岩質の違う転石から出てきた。接着剤を使おうとしたらいきなり大量の接着剤が噴出してビカビカにコーテイングされてしまった。同じ石に入っていたcalceola(写真右)の内形雄型は大分浅く見える。因みにロストロコンクは上のCyphaspisの石にも雌型が入っていた。産出量が増えてきた。めずらしいものではないものになりつつある。

f:id:kyte55712:20201018180442j:plain
f:id:kyte55712:20201018180429j:plain
f:id:kyte55712:20201018183610j:plain
f:id:kyte55712:20201018183554j:plain
f:id:kyte55712:20201018183540j:plain

 

不明種チークW5ミリと腕足、Leptaena?に似ているが内形雄型がこんな形状になるのか?W23ミリ

 これもまた岩質が違う転石。Kayseriaなど小さな腕足や化石片が点在する。サンゴは見当たらずあまり風化は進んでいない。

f:id:kyte55712:20201018183650j:plain
f:id:kyte55712:20201018183637j:plain
f:id:kyte55712:20201018183624j:plain

 

 腕足の露頭は大きな石のまま腕足の断面が多数見えている。Kymatothyrisが目立ち、8センチ以上ありそうな大きなものの雌型もあった。腕足以外の化石は見当たらない。

W60ミリ、元の厚みはわからないが、平らだ。雌型に成長痕が薄く見えるが、カルサスがあるほかは目立った模様は見られない。D9の腕足ラインにも似たものがあった。

f:id:kyte55712:20201018183143j:plain
f:id:kyte55712:20201018183208j:plain
f:id:kyte55712:20201018183154j:plain
f:id:kyte55712:20201018183246j:plain
f:id:kyte55712:20201018183233j:plain

上段はKymatothyris?下段左は見たことがない。

f:id:kyte55712:20201018183131j:plain
f:id:kyte55712:20201018183119j:plain
f:id:kyte55712:20201018183514j:plain
f:id:kyte55712:20201018183455j:plain
f:id:kyte55712:20201018183411j:plain
f:id:kyte55712:20201018183348j:plain
f:id:kyte55712:20201018180535j:plain
f:id:kyte55712:20201018180405j:plain
f:id:kyte55712:20201018183336j:plain
f:id:kyte55712:20201018183323j:plain
f:id:kyte55712:20201018183311j:plain

 

Calymene sp.

 左隅がかろうじて胸部の一部と確認できる。その隣にあるのは胸部の続きとチークの一部かも知れない。この大きさであればカリメネであろう。右側2枚が雌型。剥がせる所を剥がしてみたが判別できるものではなかった。腕足ラインの5メートルほど下で掘り出した石から出てきた。石灰質の部分と砂岩が交互に重なっているようだ。ほとんど土に埋まっているが、ここも露頭と思われる。

f:id:kyte55712:20201018182726j:plain
f:id:kyte55712:20201018182739j:plain
f:id:kyte55712:20201018182840j:plain
f:id:kyte55712:20201018183016j:plain


 このラインもどんなものが出てくるか見てみたいものだがここで時間切れ終了となった。結局丸1日この近辺を歩き回った。ただ今回は起点となる腕足の露頭を確認できたし、何本かのラインがあることを示すサンプルが得られた。黒色頁岩層の露頭を見つけるのを優先したため、沢を横切る腕足の入った露頭も確認しただけでまだ試していない。また、斜面の腕足の露頭の先がどこまで続いているのかとその上部はどうなっているかは今後の調査になる。先ずはいまだに見つけられない黒色頁岩層の露頭をみつけること。必ず沢を横切っているはずだ。Cyphaspisの追加標本もその中にある。

 とはいえ、今回は一定の成果があったのでこの近辺をまとめてD10とする。とうとう2桁になってしまった。場所もラインも違うので致し方ないのだが…。

 

 今回、D1の下部にも立ち寄っている。尾根筋では見つからなかったが中腹あたりで少し目が粗い岩質が違う石に化石を確認できた。あっても全然おかしくはないのだが…。ラインの特定までは至っていない。

f:id:kyte55712:20201018182517j:plain
f:id:kyte55712:20201018182451j:plain
f:id:kyte55712:20201018182355j:plain
f:id:kyte55712:20201018182408j:plain
f:id:kyte55712:20201018182423j:plain

 複眼は確認できないが眼の形状からするとToxophacopsではなく Phacopidae sp. A のようだ。黒色頁岩層以外からこの三葉虫が出たのは初めてだ。生息期間が少し広がったことになる。

 

 最後にもう一つ。

 産地から持ち帰った石はクリーニングしてさらに何か入っていないか細かく割り、袋に入れている。今回のD9のクリーニングが終わった時点で、ふとこの袋の中の石には本当にもう入っていないのか?と思い、その中から2,3個取り出して割ってみたら突然こんなものが出てきた。

f:id:kyte55712:20201018182610j:plain
f:id:kyte55712:20201018182543j:plain
f:id:kyte55712:20201018182619j:plain
f:id:kyte55712:20201018182558j:plain
f:id:kyte55712:20201018182531j:plain


W7ミリL14ミリAtopophacops?(ちびファコ)

 複眼と頭鞍の表面が雌型に張り付いているが保存がよく変形もしていない。デボンでまともな完全体は初めてだ。普通であればあれば結構喜ぶところだが、どうしよう?産出場所が分からない。周りの石が全部D9の石であるがD9でこんなに変形がないのはあり得ない。夏のキャンプからここののところずっとクリーニングを続けていて、そのときの石が紛れたとすると、ほぼ全部が対象になる。消去法で行くとD6あたりか?とも思うが定かでない。悩ましいところだ。まあ、これが不明種の完全体でなくてよかった。この三葉虫の完全体が得られたということで良しとする。尻尾の形状が確認できないのが残念。それにしても25×15ミリの石を割って完全体出てくるとはびっくりだ。

 

 二日目以降は別行動であったが、夜はボヘミやんに連れられて毎日違うところに食べに行った。全然高級なものではなかったが、どれもうまかった。二人との話は疑問に思うことをそれぞれ見解を聞けてすごく楽しい。フリックさんの鑑定は、こんなものが日本に?などという先入観などなく躊躇なく断じ、心強い。ボヘミやんに型取らせてと頼まれた「黒太郎」は30年預かっておいてと置いてきた。彼のメタボを止めるべくまた連れ出したいところだが、その前に私はまた歩き回ることになりそうだ。